英字新聞

(読売、毎日、朝日、英字新聞の社説を学習研究 )

海外年金生活者にとっては辛い急激な円安 円安と株高が連動する仕組みは日本だけかも

景気復調―「円安頼み」を超えねば

 日銀がきのう、景気判断を上方修正した。昨年10〜12月期の実質成長率は小幅なマイナスだったが、むしろ景気後退が「ミニ」だったことを裏付けた。

 世界経済の緩やかな復調に、アベノミクスへの期待が重なって円安・株高をもたらし、ムードを改善している。

 気がかりは、株高が円安に依存していることだ。

 円安は輸入産業や消費者を圧迫する面もある。閣僚がこの点に言及すると、円高→株安の逆回転が起き、慌てて口先介入や日銀への緩和圧力に走る光景が目につく。

 海外では日本の円安誘導への警戒感が募っている。

 主要7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁が通貨安競争の回避を確認したのに続き、週末にモスクワで開かれるG20会議の共同声明にも、同じ趣旨が盛り込まれる見通しだ。

 アベノミクスに理解を示す国々も、「3本目の矢」である構造改革で内実ある景気回復を図るという日本政府の言葉に期待しているにすぎない。

 設備や研究開発への投資、何より消費の底上げで内需を拡大し、世界経済に貢献する覚悟が日本に問われている。

 株高にわく民間企業は成長への行動に踏み出すときだ。

 上昇相場に後から加わった外国人投資家らは高い収益を求めてくる。賃金の抑制で利益を出す発想では、戦後最長の景気でもデフレから脱却できなかった失敗を繰り返すことになる。

 新たな成長の展望を開くのは個々の企業だが、消費の拡大には、成長の恩恵が国民にひろく行き渡るという期待感を高めることが欠かせない。

 デフレ圧力が働くのは、先進国で日本だけ賃金の減少が慢性化していることが大きい。賃金が減るまま円安ばかり進めば、「為替操作だ」といった海外からの批判にも抗弁しにくい。

 折しも春闘は、大手の組合が経営側に要求書を提出し、本番に入った。安倍首相はこれに合わせ、経済3団体に異例の賃上げ要請を行った。

 経済界は賞与の積み増しでは軟化しつつある。だが、賃金デフレの主因は賞与がもらえない非正規労働者の激増だという事実から目を背けるような姿勢はおかしい。

 むろん、グローバル競争のなかで、単純な横並び賃上げ方式には戻れない。正規と非正規の格差を是正しつつ、経済をどう活性化していくか。労使の工夫を政府が政策的に後押しして、成長と賃上げの好循環を生み出さなければならない。